【第1章】-幼少期- お金を意識するようになった幼き頃の原体験

「三つ子の魂百まで」

人の性格に関しては
色々な考え方があると思うけれど、
僕にとってこの言葉は真実だ。

幼少期は僕の人格形成に
最も大きく関わっている。

 

二十数年生きてきて、
色々と経験の厚みがついた。
けれど何か大事な決断をするとき、
心に余裕がなくなってきたときに現れる自分は、
思っている人間とは少し違う。

僕は自分自身を
羽振りが良くて、
細かいことは気にしない性格だと思っている。

しかし大事な場面や
切羽詰まったとき、
心に余裕がなくなってくると、
人よりやたら守銭奴的になったり
ワーカホリックになる瞬間がある。

この原体験はいつだろうかと考えてみると、
いつも幼少期に突き当たる。

 

物心ついた頃から
特撮系のビデオにハマっていた。
きっかけは覚えていない。

たまたま家にあったか、
気に入ると思って家族がみせてくれたのか。

他のどのジャンルよりも強く惹かれ、
暇さえあればビデオを見ていた。

今でも特撮に惹かれるというのは変わってなくて、
いまだによく見る。

現代はコンテンツプラットフォームが発展したおかげで
ワンクリックでどんな作品にも触れることができる。

コンテンツの享受という側面からみれば、
現代は神の時代と言って間違いない。

 

当時作品はビデオ(VHS)を
レンタルして見漁っていた。

毎週末、仕事終わりの母に頼んで
レンタルビデオ屋に連れて行ってもらうのが習慣だった。

「またこんなに借りて、1週間で全部見れるの??」

と毎週のように言われた。

母は温厚な人で、
僕が頼めば遊びのことにさえ尽力してくれた。

ときに型破りな頼みや、
馬鹿馬鹿しいことを言っては、
文句や冷やかしを浴びせられた。

言葉とは裏腹に、
母はいつも笑っていた。

これまで何気ない会話から
大事な話まで交わしてきたが、
そのうちのほとんどは
何の話題だったかすら覚えていない。

ただ、母が言ったので
特に教訓じみたものでも、
感動的な言葉でもないのに、

いまだに頭から離れない言葉がある。

 

 

それは、幼稚園の友達の家で
遊んで帰ってきたときのことだった。

自分の家に比べて、
友達の家が立派で羨ましかった。

テレビがでかかったとか、
コーヒーが自動で出てきてとか
(エスプレッソマシーンのこと)、
次の休みは家族で沖縄に行くらしいとか、
2階にはマンガ本だけの部屋があってとか、

僕は羨ましがるふりをして、
実際には、間接的に裕福でない
自分の家庭を否定した。

純真無垢な子供の外見を利用して、
残酷な行動を完遂する悪知恵がついていた。

我ながら打算的な子供である。

母は言葉を一切発さなかった。
表情一つ変えず台所で無言で皿を洗っていた。

その冷めた態度に納得がいかなかった。
自分の主張が軽視されているように感じたのだ。

最初は友達の家の話だったのが、
気づいたら自分の家庭の批判を始めていた。

なんでうちはこんなに貧乏なの?
なんで欲しいと思ったものが自由に買えないの?

化けの皮が剥がれた。

しばらくして、
皿を流す水の音が止まったかと思うと、
母はくるりとこちらを振り返った。
こちらをまっすぐ見つめる母の顔は
凛としていたが、
送られる視線だけが唯一寂しげで

その違和感に僕は言葉を失った。

数秒の静寂が流れる。

叱られるのではないかと
僕があたふたし始めると、
母は口を開いた。

「よそのおうちに負けないくらい、お母さん2倍がんばるから。」

普段何か悪いことをすれば
自分より少し上の方から
言葉や表情で諭される。

このときは、
自分と対等なところから、
一人の人間として
真っ直ぐ言葉を投げかけられたように感じた。

こちらを振り返るとき、
母が一瞬だけ眉を八の字にして
悲しげな表情を浮かべたのを
僕は見逃さなかった。

ただ叱られるより、
ずっと申し訳ない気持ちにさせた。

腹の中を読まれているような感覚になり、
その場にいるのが耐えられなくて、
適当にお茶を濁して自分の部屋に戻った。

初めての感覚だった。

 

夜中、布団からトイレに起きると、

居間でひとり黙々と
冊子をめくる母がいた。

今思えば、
おそらくあれは求人広告だろう。

起きた僕に気付いて
「ごめん、明るかった?」
とこちらに声をかけたとき、

目にわずかに涙が浮かんでいた。

トイレに起きただけと伝えて、
布団に戻った。

その夜はなかなか眠れなかった。

 

お金が生きていく上でいかに大切か、
そして稼ぐことがいかに大変かを
幼くしておぼろげながら察した。

自分はただ騒ぐことしかできず、
挙句、母を悲しませた…

情けなさと無力さに
布団の中で呆然としていた。

この頃からお金というものを
身近に考えるようになり、

お金はどうやったら手に入るだろうと
考えるようになった。

 

僕の家は母子家庭だ。

父がいないぶん、
母が仕事と家事を両立してくれていた。
そんな苦労はつゆ知らず、
僕は自分のことしか考えていなかったのである。

まだ自分の靴紐さえ満足に結べなかったが、
あの体験がきっかけで

"お金が無ければ家族を悲しませる。"

と潜在的に思うようになった。

 

そのうち、早く社会に出て
お金を稼ぎたいと思うようになった。

それは僕の中で、
ヒーローが悪を退治するのと同じくらい自然なことだった。

 

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