【第5章−1】-大学生- 研究との邂逅

3度目の夏休みの終わり。

研究室配属に関するミーティングが
学科内で行われた。

例年人気の研究室、
不人気の研究室とあったわけだが、

僕はどこの研究室にもこだわりがなかったので
最も不人気な研究室を選び、
無事配属された。

所属した研究室は分子生物学の研究室だ。

研究室選びはテキトーだったが、
内容がどんなものであれ、
与えられたテーマには
真剣に取り組むつもりだった。

これまでのバイト漬けの生活の中で、
能力の低い人間ほど
「誰でもできるが、誰もやりたがらない仕事」
に回されると学んだ。

大卒という資格の大事さ、
やる気や元気などではなく、
技術を生かした仕事の方が
醜い人間関係に巻き込まれづらいことを
何となしに感じていた。

母が大卒を猛プッシュしていたのも、
今では合点がいく。

技術を生かした仕事に就くには
就活前に研究の手技と専門知識を身につけて、
面接の時に多少喋れるようになっておくべきだという結論にたどり着いた。

今思えばこんな推論は幼稚で短絡的である。
書いていて恥ずかしい。

学部生のうちにしかも就職活動の間、
片手間で出せる結果など
たかが知れているからだ。

中途半端なエピソードを面接で喋ろうものなら、
かえって面接官に薄っぺらい人間と印象づけ兼ねない。
よほど無能な面接官なら
騙されてくれるかもしれないけれど。

とはいえ実際は研究者の道に進まなかったわけだし、
ましてやまともに就職活動すらしていない自分が
こんなことは書かなくても差し支えないかもしれないが、
どうしても書かずにはいられなかった。

 

専門知識と手技を獲得するため、
研究に集中してみることにした。

この時期はひたすら
いろんな企業のインターンシップに参加して顔を売る人もいた。
自分の場合は特定の企業を志望しているいるわけではなかったので
一社に顔を売るためだけに
時間と交通費を使うくらいなら、
少しでも研究に注力した方が
かえって有効だと思った。

研究に臨むにあたって
当時の知識レベルの話をすると、
高校時代に毛が生えた程度で止まっていた。

入学当時からバイト漬けだったため
講義の出席率はギリギリ(代筆込み)で、
試験も前日に友達のノートを
一夜漬けで暗記してなんとか通ってきた。

専門知識は皆無に等しかった。

知識ゼロの状態で研究に臨むのが心配で、
優秀な友人に相談してみたことがある。

すると、
「ぶっちゃけ講義は全然大したこと言ってないから大丈夫だよ!」

と快活な励ましが返ってきた。

そんなわけはないのであった。

理由は二つある。(←コンサルタントっぽい)

一つは「大丈夫」という言葉では
何一つ現状が解決しないからだ。

元より相談というのはそういうもののはずである。
しかしそこを見落とすほどに焦っていた。
というのをこの会話でもって認識した。

もう一つは、

彼の発言が、既に知識がインプットされた状態で講義に臨む人の
余裕によるものに他ならなかったからだ。
自分が眠い目を擦りながら
ちんぷんかんぷんで講義に臨んでいた数少ない記憶の断片が
「はい、それダウト!」と叫んでいた。

励まそうとしてくれた彼の発言が
かえって惨状の輪郭を鮮明にし、
不安はますます膨張するのだった。

言葉以外の情報全て
(表情、しぐさ、声色、etc)が
僕の知識不足を認めていなかった。

彼のことだ。ともすれば全て察したうえで
「大丈夫」という言葉を選んでくれたのかもしれない。
もう全ては手遅れですよと。

優秀な人に聞いたのが
かえって仇となったいい例かもしれない。

彼は陽気で、残酷だった。

一応断っておくと、
彼はめちゃくちゃいいヤツである。
要するに、
優秀でいいヤツに勝手に相談して勝手に撃沈した話だ。

 

"ゆうしゅうなゆうじん との こころのきょり が 4 ちぢまった"

 

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