【第7章】-大学院生- ドクターストップとビジネス

その日はいつものようにラボで実験していた。

数日前から背中に違和感があったが、
ダニにでも食われたんだろうと思って
放っておいていた。

実験に集中できないほどの鋭い痛みが走って
渋々実験を中断して家に帰った。

風呂に入らなさすぎたせいかと反省して鏡の前に立つと、
背中の左半分に
刺青のような帯状の赤い発疹が無数に現出していた。

様子がおかしかったので
そのまま急いで病院に駆け込んだ。

診断を受けると、帯状疱疹という疾患を罹患していた。

先生がやたら驚いているようだったので尋ねてみると、
どうやらこの疾患は
とても20代で発症するような病気ではないようだった。

帯状疱疹について簡単に説明すると、
加齢、疲労、ストレスによる免疫力の低下が原因で、
体内に潜伏していた水痘ウイルスが活発になることで発症する、
主に50歳以上の高齢者が発症する疾患だ。
(参考:帯状疱疹.jp

神経周りのウイルスによる疾患なので、
痺れ等の後遺症が残ることもある。
自分は放置している時間が長かったために、
その可能性が十分に危惧された。

塗り薬と飲み薬を処方され、
絶対安静を命じられた。

免疫力が非常に低下した状態で危険とのことで、
とにかくストレス源を避けろとのことだった。
精神の乱れが自律神経系に作用して
ホルモンバランスの乱れを誘発するからだ。

先生には会社でのパワハラを心配された。

誰かにハラスメントを受けた覚えはないが、
確かにサラリーマンより労働時間は長かったし、
睡眠時間は短かった…
また、ここ最近メンタルが不安定だったのは確かだ。

あまり実感はわかないものの、
冷静に振り返ると
けっこうなストレスがかかっていたらしく、
体が悲鳴をあげているらしかった。

 

ドクターストップがかかっては
さすがに自分も危機感を覚え、
仕事は全て後輩に任せて、
自宅で療養生活に入ることにした。

久しぶりに横になったベッドは柔らかく、
枕は優しく頭をもたげた。

 

一晩泥のように眠ったら体調はすっかり良くなって、
手持ち無沙汰になった。

やることがなかったので、
兼ねてから温めていたビジネスを実践してみることにした。
逃げ込んだ、という方が近いかもしれない。

大学に復帰するまで
ビジネスだけに取り組む生活を続けた。

1ヶ月ほど集中的にビジネスに取り組み、
月商20万円を突破した。
にわかに信じられなかったが、
学んできた理論が正しかったことだけは確かだった。

あとはやるだけ状態。
時間さえあれば、といった感覚だ。

先にも書いたが、
研究者になる覚悟もなく、
しかし就職活動一方に
振り切ることもできない思いで
大学に席を置き続けるのが、
何となくバツが悪かった。
それでも大学という三巾(みの)に隠れるしかなかった僕にとって、
ビジネスとの出会いはまさに渡りに船だ。

結果が伴ったことで自信がついた僕は、
修了までの残り1年半を
ビジネスに注ぐ覚悟を決めた。

 

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